本記事はVijay Boyapati氏著「The Bullish Case for Bitcoin (part 1 of 4)」(2018年2月26日公開)を翻訳、一部加筆修正したものです。

ビットコイン、強気にならずにはいられない理由 第1部(全4部)

ビットコインが物凄いスピードで過去最高価格を更新した2017年、ビットコインに強気になるべき理由など、あえて説明する必要もないほど明白に思えた。一方で、国家や特定の財に裏付けられているわけでもなく、17世紀欧州のチューリップバブルや1990年代後半の米国ドットコムバブルを彷彿させる価格急騰を演じるデジタル資産への投資は馬鹿げているようにも見えた。しかし、どちらも誤りだ。ビットコインに強気になる真の理由はもっとずっと奥深く説得力があり、しかも分かりにくい。ビットコイン投資には大きなリスクが伴う。それでも、私は現在のビットコインを一生に一度あるかないかの投資機会と捉えている。

ビットコインの起源

対面による現金決済を除き、従来、価値移転には、政府や銀行など信頼できる第三者機関の仲介が必須であった。この金融取引の大前提が、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物が公開した僅か9ページのホワイトペーパーによって覆された。ナカモトはコンピューターサイエンスの長年の課題であったビザンチン将軍問題の解決策を提示するとともに、解決策を具現化したビットコインというシステムを自ら構築することで、歴史上初となる第三者機関の仲介を必要としない遠隔地への価値移転を実現した。ビットコインという発明が経済とコンピューターサイエンスに及ぼす影響は計り知れないほど大きい。ナカモトはノーベル経済学賞とチューリング賞をダブル受賞する史上初の人物になってもおかしくない偉業を達成した。

ビットコインの発明により、希少なデジタル資産という新しい金融商品が生まれた。ビットコインとは、ビットコインネットワークで「マイニング」として知られるプロセスを経て発行されるデジタルトークンを指す。ビットコインマイニングは、しばしば金採掘に例えられるが、両者には大きな違いがある。金供給は市況や採掘技術に依存するため予測不能な一方、ビットコイン供給は予め決められたスケジュールに基づくので完全に予測可能である。また、ビットコイン供給には2100万という上限が予め設定されており、本記事執筆時点(2018年3月)ですでに1680万ビットコインが発行済みだ。マイニングにより新規発行されるビットコインの数量は4年毎に半減し、2140年までにビットコイン供給は完全に停止する。

ビットコインのインフレ率
ビットコインのインフレ率と供給量 ー 赤: インフレ率(左軸); 青: 供給量(右軸)

ビットコインには金などの物理財による裏付けも、政府や企業による保証もない。これを聞いた投資家は疑問を抱くかもしれない。なぜビットコインには価値があるのか?ビットコインの価値は株、債券、不動産、あるいは原油や小麦などの商品の評価に用いるDCF法や中間需要で評価することはできない。ビットコインは貨幣財という全く異なるカテゴリーに属するためだ。貨幣財の価値はゲーム理論で決まる。つまり、自分以外の市場参加者が貨幣財の価値をどう評価しているかを予測し、その予測に基づいて貨幣財に対する自らの評価を決める。貨幣財のゲーム理論的性質を理解するには、貨幣の起源に立ち戻る必要がある。

貨幣の起源

人類社会における取引は物々交換という形で始まった。しかし、物々交換は非常に効率が悪く、取引の件数も地理的範囲も極めて限定的だった。物々交換には欲求の一致の欠如という大きな問題がある。例えば、漁師とりんご農家の間での取引は、漁師がりんごを欲し、りんご農家が魚を欲している場合にのみ成立する。この物々交換の不便さを解消するため、(貝殻、動物の歯、火打ち石など)希少性と象徴的価値のあるコレクションアイテムを保有する人が次第に増えた。Nick Szaboが貨幣の起源について書いた素晴らしい論文で指摘したように、新人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人との生存競争で、新人類が進化論的優位性を確立できた裏にはコレクションアイテムの選好があった。

コレクションアイテムが進化論的見地で果たした主要かつ究極の機能は、価値の貯蔵と移転のための媒体であった。

コレクションアイテムは「貨幣の原型」とも言える。コレクションアイテムを得たことで、新人類は潜在的な敵でもある他部族との取引や、世代間の財産継承が可能になった。現代貨幣の主要機能は「交換手段」だが、旧石器時代にはコレクションアイテムの取引は非常に稀で、その主要機能は「価値貯蔵手段」であった。Szaboは以下のように説明する。

現代貨幣に比べると、原始貨幣の流通速度は極めて低かった。一般的な人は一生のうち、ほんの数回しか貨幣を移転しなかったかもしれない。にもかかわらず、耐久性が高いコレクションアイテム(今日私たちが家宝と呼ぶもの)は、何世代にも渡って受け継がれ、相続を経る毎に価値を大幅に増やした。

新人類は何をコレクションアイテムとして収集、保有するかを決める際、ゲーム理論的ジレンマ、すなわち、自分以外の人は何を欲するのか?という問いに直面した。コレクションアイテムとして価値を持ちそうな財を正確に予測できれば、取引で優位に立ち、資産を増やすことができた。アメリカ先住民のナラガンセット族のように、価値交換だけを目的とする他に使い道のないコレクションアイテムの生産に特化する部族もいた。ここで注目すべきは、コレクションアイテムの将来需要を早く正確に予測できるほど、その保有者が得る利益が大きくなることだ。安価で入手した財にコレクションアイテムとしての価値がつき、財の需要拡大に伴って価格が上昇するためである。さらに、将来、価値貯蔵手段として需要を喚起することを期待して特定の財を入手する行為そのものが、財のコレクションアイテムとしての普及を促進する。この循環性こそ、社会全体が単一の価値貯蔵手段に収束する流れを加速するフィードバックループだ。ゲーム理論で言う「ナッシュ均衡」である。価値貯蔵手段におけるナッシュ均衡の実現が社会にもたらすメリットは大きい。貿易の振興と分業の進化を通じて、文明化への扉が開かれるのだ。

それから数千年の間に、部族社会は国家へと発展し、多様な貿易ルートが確立した。その過程で、それぞれの国で選ばれた異なる価値貯蔵手段の間に競争が生まれた。すると、貿易業者は取引の決済に使う価値貯蔵手段の選択を迫られた。自国または取引相手国の価値貯蔵手段か、あるいは両者の併用か。貿易業者は外国の価値貯蔵手段を入手することで、その国での取引を優位に進められる。さらに、外国の価値貯蔵手段を保有する者には、その財の自国での価値貯蔵手段としての普及を促すインセンティブが働く。自国での需要が増え、財の価値が上昇すれば、価値貯蔵手段に保管する財産の購買力が高まるためだ。外国の価値貯蔵手段を保有する国民が増えることは、社会にとっても有益である。共通の価値貯蔵手段を持つ国では、貿易コストが大幅に削減され、結果的に貿易利益が増加する。実際、世界が初めて金という単一の価値貯蔵手段を共有した19世紀は、歴史上最も貿易が拡大した時代であった。ケインズはこの繁栄の時代を以下のように表現している。

19世紀が経験した経済発展には驚くばかりだ。人口の大半が能力に秀でた人格者で、中流または上流階級に属し、史上最大権力を誇った君主の時代よりも高い生活水準を安価に享受できた。ロンドンの住人はベッドで朝の紅茶を飲みながら、世界中から好きな商品を好きなだけ電話で注文でき、それほど長く待たされることなく自宅の玄関先まで届けてもらえた。

第2部(全4部)に続く

第2部では、優れた価値貯蔵手段の要件を定義し、金や法定通貨という従来貨幣財とビットコインの価値貯蔵手段としての優位性を検証する。

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Teruko Neriki

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